天国のひかり

 

 

 

屋根裏の片すみ。

 

 

赤ちゃん子ねこが、6匹。

 

 

にゃ~にゃ~にゃ~。

 

 

待ち遠しそうに泣いている。

 

 

子ねこたちのひとみは、何かを求めているよう。

 

 

親ねこが、現れる。

 

 

口には、えさをくわえている。

 

 

子ねこたちの元へ、ポトリとえさを落とす。

 

 

クチャクチャと音をたてながら、一生けんめいに食べはじめる子ねこたち。

 

 

その姿をじっと見守る親ねこ。

 

 

ほほえましい。

 

 

きっとわが子の成長をねがっているのだろう。

 

 

ケガをしないように。

 

 

病気に負けないように。

 

 

無事に生きていけるように。

 

 

子をおもう気持ちは、人間と同じ。

 

 

親ねこは、来る日も来る日もえさをはこんだ。 

 

 

 

 

 

ある雨の日。

 

 

ザザァーーッ。

 

 

アスファルトにはね返る雨つぶ。 

 

 

いつものように親ねこが屋根裏へ、えさをはこんでくる。

 

 

と、6匹の子ねこたちの姿が見あたらない。

 

 

いったい、どうしたのだろう!

 

 

どこへ行ってしまったのだろう! 

 

 

気が狂ったように泣き叫びつづける親ねこ。

 

 

ニャーオ、ニャーオ、ニャーオ、ニャーオ、ニャーオ……。 

 

 

濡れたからだが、悲壮感を漂わせている。

 

 

6匹の子ねこたちは、処分された。

 

 

家主が保健所に頼んだのだ。

 

 

人間に殺されたのだ。

 

 

胸がきゅうと痛い。

 

 

親ねこは泣き疲れたのか、途方にくれている。

 

 

魂をぬかれてしまったような感じ。

 

 

これからどうやって生きてゆけばいいのだろう…。

 

 

なにを希望に生きてゆけばいいのだろう…。

 

 

親ねこのひとみが、潤んでいる。

 

 

「あの子たちを守ってあげられなかった」 

 

 

「あの子たちを産まないほうがよかったのかもしれない…」

 

 

頭をたれる親ねこ。 

 

 

 

 

 

ある晴れた日の遊歩道。

 

 

人間の親子づれが、手をつないで楽しげに歩いている。

 

 

そのうしろ姿をじっと見つめる親ねこ。

 

 

どんな思いで見ているのだろう。

 

 

「……」 

 

 

さみしげな表情。

 

 

雲と雲のあいだから、サァーと一筋のひかりがさしこむ。

 

 

ふと空を見上げる親ねこ。

 

 

まぶしい。 

 

 

「……ぼくたちは、元気でやってるよ……」

 

 

「……産んでくれて、ありがとう……おかあさん……」

 

 

そんな声がおりてきた。

 

 

役目を果たしたかのように、一筋のひかりは、ふたたび雲にかくれた。

 

 

~~ふわふわの雲の上で戯れる6匹の子ねこたち~~ 

 

 

親ねこは、「ほっ」とひとつ息をついた。

 

 

 

 

 

ゆるやかな坂道。

 

 

チュンチュンと小鳥のさえずり。

 

  

葉桜がティラティラと風にゆれている。

 

 

親ねこは、前を向いて、ゆっくりとのぼりはじめた。

 

 

にゃあ~お。